徹底的に身体を見ていくことが、座る瞑想の最高の準備になる
——ピラティスメソッドの考案者であるジョセフ・ピラティスも、当初から「ボディ・マインド・スピリット」の3つを扱うメソッドであると言っています。
BMS-R Labのマインドフルネスのクラスでいつもお話ししていることですが、心というのはすぐに暴走してしまうものなんです。しかし身体に注意を向けることによって、その暴走を止めることができる。
おそらく、ジョセフ・ピラティスが「ボディ・マインド・スピリット」と言っているのも、そういうことでしょう。
暴走しがちなマインドを、ボディに注意を向けることによって入れ込むことができたら、その時初めてスピリットという、まったく新しいものが見えてくる。そういう話なんです。これは仏教でもヨガでも、どんな宗教でも同じことなんですよ。
——「動く瞑想」としてのピラティスをやっていれば、他の瞑想は必要ない?
私は動と静、両方必要だと思いますね。ピラティスのクラスをやっている1時間は、心のことを気にしたりせず、動くだけで十分だと思うんですけど。
あれだけ身体を動かした後に、今度は静の時間も持ったら、本当にスーッと心の暴走が収まりますんで。だから組み合わせですよね。
私たちの場合でいうと、1日の中に、まずヨガをやり、それから「歩く瞑想」をやって、その後に普通の座る瞑想をやって、というふうにバランスをとっていきます。
だから、ここまで徹底的に身体を見ていくことというのは、座る瞑想に入っていくための最高の準備ということが言えると思います。
例えば、ピラティスのクラスが終わったら、スタジオのどこかに自由に座って、10分だけ今度は身体を動かさずに内側から感じる時間をもつ、とか。そうしたら、もう心は一気に収まりますよ。
——スタジオで得た効果を日常にうまく活かすにはどうしたらいいですか?
私たちは一日中、まさに身体と共に生きているわけですから、この1時間に身体に注意を向けていたこの感覚を、クラスが終わった後にも、例えば歩くときの歩き方とか、階段の上り方とか、そういうものにそのまま持ち込むことです。
例えば、歩くという行為って、何気なくやっているけれど、実はものすごく複雑なことをやっているわけで。まず右足、次に左足という、一つ一つの動きに注意を向けていく。そうしたら、スタジオにきている1時間だけじゃなく、24時間がマインドフルになるわけです。
だから、なるべく普段からそういう意識を持って過ごすこと。そしてピラティスのスタジオに来た時は1時間、集中的にやるっていう。そうしたら、スタジオでの1時間と残りの生活がうまくつながっていくのだと思います。
山下良道(やました・りょうどう)さん
スダンマチャーラ比丘。1956年東京都生まれ。鎌倉一法庵住職。東京外語大学仏語科卒業後、曹洞宗僧侶となる。1988年、アメリカのヴァレー禅堂で布教、のち京都曹洞禅センター、渓声禅堂にて坐禅指導を行う。2001年ミャンマーのパオ森林僧院にてテーラワーダ比丘となり、日本人として初めてパオ瞑想メソッドを修了。現在は鎌倉一法庵を拠点として、日本各地、インド、台湾、韓国などで坐禅瞑想指導を行う。現在の立場は、大乗とテーラワーダを統合した「ワンダルマ仏教僧」。主な著書に『本当の自分とつながる瞑想入門』、『青空としてのわたし』
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