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自分の身体のどこが足りないのかに敏感になれる

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――ピラティスさんが多くのダンサーを指導したのは、ニューヨークがたまたまダンサーの多い地域だったということもあったようですが、由佳さんはなぜ、ダンサーにとってピラティスが有効だと思いますか?

まず、自分の身体の状態を知れるようになるというのが大きいと思います。身体のコンディションというのは毎日違うものですが、その違いに敏感になったし、その時々で何が自分に足りていないのか、どこが弱いのかというのが感じられるようになりました。

――ピラティスの特長には、身体の部分一つ一つに意識を向けながら動いていくというところがあって、だから自分の身体の状態がすごくわかるようになると感じる人は多いようです。

加えて、私はクラシックと現代作品の両方を踊ることがあるんですが、そのどちらにもピラティスが有効だと感じます。

クラシックだと、片足で立って回るには、自分の重心がわかっていることが不可欠です。その点、ピラティスをやった後だと、自分の重心が取りやすいんです。

一方、現代作品の場合はわざとバランスを崩す動きが多いんですが、その時も、やっぱり自分のコアがわかっていないと、元の位置に戻ってこれません。どちらを踊るにも、ピラティスはすごく役立っていると感じます。

――他にも、ピラティスにしかないものというのを感じますか?

私はバレエの仕事で世界中のいろいろなところに行く機会があるのですが、その度に、行った先でピラティスのクラスを受けるように意識しているんです。

すると、その度に身体を直されて、自分の身体について新たに気付くことがあります。そういう奥深さというのも、ピラティスの魅力なのかなと感じています。

毎年夏に日本でBASIのクラスを受けるたびに、レッスンの内容が毎回進化しているのを感じます。それはすごいです。常に勉強しているんだなあというのが伝わります。

――それはちょっと安心しました。変わっていなかったらどうしようって。(今回のインタビューはBASIピラティスのインストラクターSatokoが行った)

 

逆境に負けない精神力は、ピラティスのたまものなのかも

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――ピラティスはただ身体を動かすだけではなくて、いま自分がやっていることに意識を向けることが、精神状態をリアラインすることにもつながると言われます。そういう効果を実感することはありますか?

そうですね。これはポーランドに限らないんですけど、日本人として異国のカンパニーのトップで踊るというのは、精神的に強くなければ務まりません。

そういう中で自分がブレずにいられたのは、ピラティスがもたらしてくれているものがあったからなのかもしれません。

――そういう精神的ストレスを乗り越えるために、どんなことをしたんですか?

どうやって乗り越えたんだろう(苦笑)。とりあえず自分に負けない精神力ですかね。そこで辞めたら後で自分が一番悔しいのが分かっているから。

すっごく辛い、諦めたらどんなに楽だろうという時にこそ頑張ろうと思ってやったら、本当に超えられるんだというのを何回か経験して、じゃあまた次もできるかなって思う、その繰り返しでした。

その壁は何回でも来るんですけどね(笑)。

――プロで踊って突き詰めている人こそ、怪我の経験があることが多い印象なんですけど、由佳さんは特に怪我をしたことがないそうですね。それも本当にすごいことだなって思うんですけど。

もちろん身体には気をつけていますが、精神的にしっかりしていたら、多少の身体のきつさは乗り越えられると思うんです。

足首を痛めたり、他に痛いところがあるときももちろんありますが、踊りたい気持ちが勝ってしまうので、ごまかして続けてしまいます。だからこそピラティスなどの日々のトレーニング、ケアが大切だと感じます。

また、身体が辛い時でも、精神がしっかりしてたら病気にはならないし、プレミア前などで精神的に緊張状態が続いていると、身体の疲れは出てこない。絶対にやりきるって思っていたら、身体も付いてくるものなんだと感じます。

だから、ある程度から先はメンタルだと思っていて、そういう面でもピラティスにはすごく支えられているのかも知れません。

 

海老原由佳(えびはら・ゆか)

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1986年、東京生まれ。中国に住んでいた6歳の時にバレエを始める。北京舞踏学院の先生に師事、その後、岩田バレエスクール、カナダ Goh Ballet Academy で学ぶ。ノルウェー国立バレエ劇場、イギリス、フランス、アメリカ、クロアチア国立劇場ソリストを経て、2011年からポーランド国立劇場に所属。入団2年後にプリンシパルとなる。ノイマイヤーの『真夏の夜の夢』プレミアで主演に抜擢されるなど、その他多くの振付師の作品を踊る。2014年度、2017年度と2度にわたり、ポーランドの最優秀女性ダンサー賞を受賞。

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