原理と信頼性

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原理と信頼性

スマートフォンのカメラを用いた心拍変動解析システムの開発

駒澤真人1,2 板生研一2,3 羅志偉1
1 神戸大学大学院システム情報学研究科 〒657-0013 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1
2 WINフロンティア株式会社 〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-12-1 新有楽町ビル247
3 順天堂大学医学部 〒113-8431 東京都文京区本郷 3-1-3
※第20回人間情報学会 ポスターセッション

概要

近年、自律神経を測定するセンサやソフトウェアが開発されてきているが、どれも専用の端末機器を使用する為、一般の人が使用するにはハードルが高いのが現状である。そこで本研究では、一般に市販されているスマートフォンを用い、端末のカメラに指先を約30秒強当てることで、血流の輝度変化からRR間隔の変動を検出して、自律神経指標を簡便に測定できるシステムを開発した。ノイズを除去する独自のフィルタリング手法を適用することで解析精度が向上し、専用の指尖脈波センサを用いたシステムと比較したところ、約8割の相関があることが示せた。
キーワード: 心拍変動解析、自律神経、ストレス、リラックス、スマートフォン、カメラ、輝度

背景と目的

現代はストレス社会と言われて久しいが、過度のストレスを長期間にわたって受け続けると、自律神経系に変調を来すことが明らかになっている[1]。そのため、自律神経の状態を日々把握することは自己管理をする上でも重要であるといえる。近年では、自律神経を測定できるセンサやソフトウェアが開発、販売されてきているが、どれも専用の端末機器が必要であり、高価な為、一般の人が使用するにはハードルが高いのが現状である。そこで本研究では、専用の端末機器を使用せず、一般に市販されているスマートフォンのカメラを用いて、簡便に自律神経の測定(心拍変動解析)ができるシステムを開発した。

測定の原理

人間は呼吸をする毎に血流に含まれるヘモグロビンの量が増減するため、その影響で指先の皮膚の色(輝度)が微妙に変化している。そこで本システムでは、スマートフォンのカメラ部分に指先を当て、皮膚の輝度を連続的に取得することで、輝度の変化から脈波波形を検出し、その脈波のゆらぎより、自律神経指標を解析している。図1に測定の原理のイメージを示す。

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解析処理の流れ

本システムの解析処理の流れを図2に示す。本システムでは大きく、「1. 輝度波形解析エンジン」と「2. 自律神経解析エンジン」の2つの解析処理を設けている。まず、「1. 輝度波形解析エンジン」の「1-1輝度データのノイズ除去フィルタ」では、スマートフォンのカメラで取得された輝度データには、高周波成分のノイズの影響が大きい為、波形のデータスムージングで用いられる「Savitzky-Golay法」を適用し、データを平滑化している。データの平滑化には、2次微分値を用いて、フィルタ窓の幅は、波形が最も安定する値をプログラムでシュミレーションして最適値を決定している。

また、「1-2 ピーク検出アルゴリズム」では、スムージングされた輝度波形からピークを符号反転で検出し、RR間隔波形(ピーク間隔波形)を取得している。
次に、「2. 自律神経解析エンジン」の「2-1 RR間隔の異常値除去ロジック」では、直近のRR間隔の平均値からの差分が、ある閾値を超えているRR間隔値を異常値と推定して、値をフィルタリングしている。また、得られたRR間隔波形にローパスフィルターを適用して(「2-2 ローパスフィルター」)高周波のノイズを除去し、「2-3 周波数解析アルゴリズム」にてRR間隔波形に対して周波数解析を施し、自律神経指標を算出している。自律神経指標の算出手法は、論文[2]の手順に則った。(本システムの一連の解析アルゴリズムは特許申請中)

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周波数解析手法とその特性

律神経指標はRR間隔波形を周波数解析し、得られたパワースペクトルの0.04Hz~0.15Hzの低周波数成分(LF)の面積値を交感神経指標、0.15Hz~0.4Hzの高周波成分(HF)の面積値を副交感神経指標として定義して算出する[2]。周波数解析手法は、主に2つの手法が存在する。

  • FFT(高速フーリエ変換)
  • MEM(最大エントロピー法)

FFTは、波形を正弦波の組み合わせとして仮定し、時系列データに窓関数を適用することで、有限長のデータを無限長に拡張して計算をおこなう手法である。データが短いと、スペクトルが悪化して精度が落ちる欠点があるが、計算処理は高速な利点がある。一方MEMは、波形を自己回帰モデルとして仮定するため、時系列データに窓関数の処理が不必要で、元のデータをそのまま使える。また、計算にやや時間はかかるが、短いデータ長からでも精度の高いスペクトルを算出することができる利点がある[3]。本研究では、両手法での測定時間と精度を検証し、最も短い時間で精度良く算出できる手法を選択した(次項参照)。

測定時間と精度の関係

図3にFFTとMEMでの測定時間と精度との検証実験の流れを示す。一般的に、自律神経解析には5分間のRR間隔データを用いて算出する必要があるといわれている[2]。そこで、短いデータの解析に利点のあるMEMを使用して、FFT5分とMEM2分での精度比較をおこなった(①の検証)。その結果、LF(低周波成分)は90%程度、HF(高周波成分)は80%程度と、高い相関があることが示せた。次に、MEMの測定時間をどれくらいまで短縮できるかを検証した。MEM 2分とMEM 1分、MEM 45秒での精度の違いを検証ところ(②、③の検証)、LF成分、HF成分共に90%程度と非常に高い相関があることが分かった。また、MEM 2分とMEM 30秒での精度の違いを検証したところ、LF成分では90%程度の相関がある一方、 HF成分で精度が70%程度と相関が落ちてくる傾向がみられた。上記の傾向から、MEMを使用すれば30秒~45秒程度まで測定時間を短縮できる可能性があることが示せた。

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測定精度の検証

本研究で開発したスマートフォンのカメラを用いた心拍変動解析システムの精度を検証するため、専用の指尖脈波センサシステム(WINフロンティア株式会社製 Lifescore Quick ココロとカラダのバランスチェックシステム)を用いて精度比較を行った。指尖脈波センサ及びスマホカメラでの測定時間は38秒とした(周波数解析手法にMEMを使用)。表1に被験者の属性を以下に示す。男女11名の被験者を対象に、のべ261データを測定した。

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測定精度の結果

指尖脈波センサとスマートフォンカメラで同時測定を実施したときの、自律神経バランス(交感神経と副交感神経の割合)の相関図を図3に示す。相関係数は0.8であり、有意差検定を実施したところ有意な正の相関(p<0.05)が認められた。また、交感神経と副交感神経の総和である自律神経活動量(トータルパワー)の相関図を図4に示す。相関係数は0.89であり、有意差検定を実施したところ有意な正の相関(p<0.05)が認められた。最後に、心拍数の相関図を図5に示す。相関係数は0.99であり、有意差検定を実施したところ有意な正の相関(p<0.05)が認められた。

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結論

本研究では、一般に市販されているスマートフォンを用い、端末のカメラに指先を約30秒強当てることで、血流の輝度変化から心拍変動を検出して、自律神経指標を算出するシステムを開発した。専用の指尖脈波センサを用いた心拍変動解析システムと比較したところ、約8割の相関があることが示せた。

参考文献

[1] 尾仲達史, ストレス反応とその脳内機構. 日本薬理学会誌2005;126(3):170-173
[2] Task Force of the European Society of Cardiology and the North American Society of Pacing and Electrophysiology. (1996). Heart rate variability: standards of measurement, physiological interpretation, and clinical use. Circulation, 93, 1043-1065.
[3] 日野幹雄:スペクトル解析(朝倉書店,2010)新装版

 


Analysis of Human Autonomic Nervous Activity Based on Big Data Measurement Via SmartPhone

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Measurement and Evaluation of the Autonomic Nervous Function in Daily Life

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On Human Autonomic Nervous Activity Related to Weather Conditions Based on Big Data Measurement via Smartphone

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Health医学論文誌(査読付き)

 


On Human Autonomic Nervous Activity Related to Behavior, Daily and Regional Changes Based on Big Data Measurement via Smartphone

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約10万件の大量の心拍変動データに基づく自律神経機能の日内変動について

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※第22回人間情報学会 ポスターセッション

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大量の心拍変動データに基づく自律神経機能と気象との関係

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約10万件の大量の心拍変動データに基づく自律神経機能と年齢,BMIとの関係

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