Googleやインテルといった先進企業が実践していることで一躍有名になり、日本でも雑誌などで特集される機会が増えた「マインドフルネス」。日本ではそれ以前から「瞑想」という名前で呼ばれてきたものですが、その実態はよく分からないという人がまだまだ多いのではないでしょうか。
そこで今回は、鎌倉にある一法庵を拠点に、大乗仏教とテーラワーダを融合した独自のメソッド「青空への瞑想」を提唱されている山下良道師に、「瞑想≒マインドフルネスとは何か」をテーマにお話を伺いました。
山下良道(やました・りょうどう)さん
スダンマチャーラ比丘。1956年東京都生まれ。鎌倉一法庵住職。東京外語大学仏語科卒業後、曹洞宗僧侶となる。1988年、アメリカのヴァレー禅堂で布教、のち京都曹洞禅センター、渓声禅堂にて坐禅指導を行う。2001年ミャンマーのパオ森林僧院にてテーラワーダ比丘となり、日本人として初めてパオ瞑想メソッドを修了。現在は鎌倉一法庵を拠点として、日本各地、インド、台湾、韓国などで坐禅瞑想指導を行う。現在の立場は、大乗とテーラワーダを統合した「ワンダルマ仏教僧」。主な著書に『本当の自分とつながる瞑想入門』、『青空としてのわたし』
瞑想って何のためにするのですか?
誰しも、生きていたらいろいろと悩みを持っていますよね? 仕事がうまくいかない、ボーイフレンドとの関係、将来への不安など、どんなに楽しげに見えても、悩みがゼロということはないはずです。
こうした誰もが日常の中で抱えている悩み事や不安、イライラを解決するために、瞑想はあります。ちょうど、お腹が痛い人のために胃薬があるように、瞑想は日常の悩みに対して処方される薬のようなものです。
瞑想は一部の信心深い人たちだけのためにあるものというイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。普通の人の、普通の悩みを解決するためにあるのです。
どうして瞑想をすることが悩みの解決につながるのですか?
多くの人は、自分自身の悩みでありながら、その本質を理解していません。「あなたが苦しんでいる原因は何ですか?」と聞くと、大抵の人は的外れなことを答えます。不安や後悔、怒りを生んでいるのは、過去に犯した失敗だったり、自分にひどいことを言った誰かだったりだと思い込んでいます。
仮に誰かがあなたのことを侮辱したというのが事実だとしても、それはたった1回だけのことです。あなたが苦しんでいるのは、そのたった1回だけの出来事を、心の中で何回も繰り返し思い出しているからではないでしょうか。では、思い出しているのは誰か? それはもちろん、あなた自身です。
あなたがひどいことを言った誰かに謝罪してほしいと思ったとして、その人をコントロールして思い通りにすることなどできません。一方で、悪いのは何回も繰り返し思い出している自分自身の心の暴走だと考えれば、自分がその暴走を止めるだけで苦しみから逃れられるのです。
瞑想はまず、苦しみの本質が自分自身の心にあるということに気づくところからスタートし、自分自身の心を徹底的に見つめ直すことで、苦しみで凝り固まった心を少しずつ解きほぐしていく作業なのです。
ヨガやピラティスと瞑想にはどんな関係がありますか?
ヨガやピラティスで体を動かしていて、気持ちが良いと感じたことがあると思います。では、気持ちが良いと感じるのは、単に筋肉が伸びたからでしょうか?
いいえ、そうではありません。緊張すると体が震えたり、恐怖を感じると全身がこわばったりするように、人間の心の問題は体にも表れます。アーサナ(ヨガで体を動かすこと)が気持ち良いと感じるのは、そういった心の問題のせいで縮こまった体が解きほぐされるからです。
とはいえ、元をたどれば問題は体そのものではなく心にありますから、運動をしているだけでは問題を解決するのに不十分です。解決するには心そのものを解きほぐしてやる必要がある。そのための具体的な方法論が瞑想です。
ヨガの代表的な考え方であるアシュタンガによると、ヨガには8つの段階がありますが、アーサナはその中の3番目でしかない。つまり、単に体を動かしているだけでは全体の半分以下しか実践していないことになるのです。そして、後半4つこそが瞑想にあたります。
続きは後編で。
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