ヨガやピラティスというと、日本ではまだまだ美容や健康目的で行うものというイメージが一般的なようだ。だが、GoogleやIntelといった米国の先進企業が研修に取り入れていることが広く知られたことで、仕事のパフォーマンス向上という点でも注目を集め始めている。
とはいえ、具体的にピラティスのどんなところが仕事に活きるのかというのは、外から見ているだけではなかなかイメージしづらいところもあるだろう。また、男性からすれば、女性ばかりのピラティススタジオにいきなり飛び込むのには、心理的な抵抗があるかもしれない。
そこで今回は、会社ぐるみでピラティスに取り組むある企業の事例を紹介したい。
英国の自然派コスメブランド「LUSH」の日本法人であるラッシュジャパンは、7月末に開催した社内会議の冒頭で、出席者全員参加のピラティスを実施した。同社としても初めての試みだったが、講師にはBASIピラティスのインストラクターを招き、1時間にわたって体を動かす本格的な内容だった。
会議の前にピラティスを行う狙いはどこにあったのか。初めてピラティスと接する社員、特に男性社員からはどのように受け止められたのか。発案者である同社取締役・ブランド担当役員の小林弥生さんに話を聞いた。
左:株式会社ラッシュジャパン 取締役 ブランド担当役員 小林弥生さん
右:株式会社ラッシュジャパン 広報 小山大作さん
自分を見つめる時間を設けることが、相手との相互理解を深める
「なぜ会議前にピラティスをやることになったのか。簡単にいえば、私自身がピラティスをやっていて、その良さに触れたからということになりますね」
1年ほど前から個人的にピラティスを続けてきたという小林さん。当初は体調を整える目的で始めたものだったが、続けていくうちにピラティスが単なるエクササイズではなく、仕事のパフォーマンス向上にも寄与するものだと気づいたという。
「1時間にわたって自分の呼吸に集中し、背骨の動きに意識を向けることで、凝り固まっていた頭がほぐれてリフレッシュすることができた。もともと感情を原動力にして仕事に向かうタイプだったのですが、ピラティスを始めてからは、自分が今どんな状態にあり、どんなことを考えているかといったことが俯瞰で捉えられるようにもなりました」
もちろんこうした効果を整理して表現できるようになったのは、ずいぶん後になってから。だが、そうした「気持ち良さ」は当初から感じていたものだった。会議のアイスブレイクにピラティスを行うことで、人によって程度の差こそあれ、何らかのポジティブな効果が得られるのではないかという期待がまずあった。
さらに、こうして自分を俯瞰して見つめ直すことは、自分とは異なる意見を持つ人を認め、お互いに理解を深めることにもつながるという実感があった。
今回の会議に出席したのは、小林さんの所属するブランド・コミュニケーションチームと、経理などを業務とするファイナンスチームの計80人。仕事の性質上、感覚的で柔軟な発想を得意とする前者と、厳密に数字を扱う後者とは、お互いにコミュニケーションが容易でないと日頃から感じていたという。
前年1年間の会社の取り組みを振り返り、9月から始まる新しい1年の方向性を全員が共有する重要な会議を、部署の違いや役職、年次に関係なく、フラットに意見を交わせる場にしたい。その幕開けにピラティスを持ってきたのには、立場の違う出席者同士がお互いに心を開く、まさにアイスブレイクとしての狙いがあった。
続きは後編で。
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