仕事や趣味で最高のパフォーマンスを発揮するにはどうしたらいい?
悩みや不満など、ネガティブな気持ちはどのようにして解決すればいい?
心と身体に休息を与えて、心身のバランスを上手に保つ方法は?
現代はストレス社会と言われますが、適度なストレスはヒトの成長に欠かせません。
日々「こころを整える」ためにどうすればいいのか、COCOLOLOマガジン編集部が様々な分野で活躍する人物からそのヒントを探る「こころトーク」。
今回のゲストは、京都二条城近くに「ウサギノネドコ」というミセ・ヤド・カフェを構え、社長、プロデューサー、広報・・・と複数の役割をこなしながら独創的な活動を続けている吉村紘一さんです。国境を超えて魅了する世界観を提供し続ける姿勢やものの見方には、こころを整えるヒントがたくさんありました!
2回にわたってお届けする前篇では、代表商品でもある「宙 Sola cube」誕生のきっかけから、自然の造形美を見つめる独特の目線についてお届けします。
身近なものに、グッとくる美しさがあった
編集部:記事などでご活躍を拝見しています。私が植物の造形美をアクリルキューブに封入した「宙 Sola cube」を知ったのが8年ほど前です。
今では海外で展示会を行ったり、事業も拡大されてすごいですね。今回は実際にお店や商品も拝見しながらお話を伺えればと思います。どうぞよろしくお願いします!
吉村:遠方に足を運んでいただいてありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
編集部:現在は自然界の美しい世界を伝えることにこだわっていらっしゃると思いますが、そもそもこういうプロダクツを作ろうと思われたきっかけは何だったのでしょう?
吉村:構想は2006年からありました。私はもともと東京で広告会社で働いていて、広告制作もやりがいがあって面白かったのですが、やっぱりもう少し上流のところで、「小さくてもいいから自分の手でモノ作りに関わりたい」という気持ちがあって、それで始めました。
でも、いざモノづくりをしようと思っても、既にいろいろモノが飽和していて、、、。
そういう中で、私が一から何かを表現するというよりも、「実は既に世の中にあるけれど目に留まっていない美しいものを紹介したい」という気持ちになり、その結果、植物の造形美をテーマにすることになったのです。
「モミジバフウ」という木の実がありまして、ここのミセの庭にもあるし街路樹としてもよく使われています。その実があちこちに落ちているのですが、それを見てグッと来ましてね(笑)。
これを伝えるにはどうしたらいいかって考えて、アクリルキューブに入れて紹介したら面白いのではないかな?と。それがSola cubeが生まれたきっかけですね。
編集部:目のつけどころがすごいですよね!その実は、小さい頃から知っていたとか?
吉村:幼少期の原体験ではないのです。
何か作ろうと思った時に、自分の頭の中にあるものを全部吐き出していたら、その中にあったという感じです。
私はタイとフィリピン育ったのですが、治安が良くなかったため、マンションの敷地内だけで遊んでいました。日本で育った子どもと比べて自然体験は少ないと思います。だから逆に自然物への衝動があったという気はします。
編集部:中に封入する素材を選定するときの基準はありますか?
吉村:シンプルに言うと、「ストイックな造形」がテーマです。植物が生き抜くために削ぎ落とした造形の魅力というのを伝えたいと思っています。もちろんお花なども植物が生き抜くために進化した結果ではあるのですが、それだけだと華やかさにだけ目がいってしまうかなと。一見地味であったり、人の目にとまりにくい、実や種にも造形美があるよ、というのは伝えたいですね。
編集部:植物にとって削ぎ落とされた造形も生きるための知恵なのですね!ハーブの話と重なります。植物って一度根を下ろしたら自分では動けないから、紫外線から身を守る抗酸化作用とか虫を近づけない抗菌作用とか、フィトケミカル成分を産生します。
吉村:そうなんですよ。おっしゃる通りで、植物って根を張って生きているから動けない。だけど種を繁栄させないといけないんです。狭いエリアに留まるより広い範囲で種を残した方がいいからそのためにあらゆる手を使って生き抜いているというのが面白いところです。
何千年、何億年もかけて作られる造形にロマンを感じる
編集部:その観点で、この植物は面白い!というのはありますか?
吉村:例えば、タイガーズクロウ(その名の通り、トラの爪のような形をした実)なんかは、より遠くまで種子を運ぶために、爪でほかの動物に引っかかるようになっていて、爪の間から種を弾き出すんですよね。タンポポの綿毛なんかも、風にのって遠くへ飛ぶために種にパラシュートをつけるっていう戦略をとって成功しているわけです。
タンポポの綿毛って雨が降ったらパタンと閉じるし、花が萎れたあと、一度茎をググ~と伸ばしてより遠くへ綿毛を飛ばしますし、すごい進化形なんですよ!(笑)。ほんと、よくできたデザインだなって思います。
編集部:Sola cube シリーズには封入する対象物によって、「植物」に加えて、Mineral(鉱物) と Micro(微生物)もありますね。それぞれ違いは何ですか?
吉村:そうですね、ざっくり違いというと、植物、鉱物、動物の自然三界に分かれているという感じでしょうか。Mineral(鉱物)は生き物じゃないですが、地球内部でそれこそ何万年、何億年もかけてある造形に結晶していくというところにロマンや物語を感じます。
Micro(微生物)は、目に見えない世界に魅力的な造形があるというところに面白さがあるな、と思っています。目に見えないけど実は身近みたいな(笑)。 今この空間にもいろいろな微生物が漂っているわけですよ!
編集部:あ~、小さい頃、顕微鏡でほこりを見て、わ~きれいって、、、あの感覚ですね!
吉村:まさに、そうですね。拡大して可視化することで面白い世界があるなって思いますよね。ただ、私は研究者じゃないですし、一つのことをテーマに深くどっぷり掘っていくというタイプでもないので、次にご紹介するなら何が面白いかなぁと、自然界にある美しい世界を探検しているという感覚で活動しています。
未知との遭遇のワクワクが創造の原動力に
編集部:ふだんから小さいものに目が行ったりするんですか?
吉村:う〜ん、どうだろう・・・・・・。でも、旅行へ行くとたいてい拾いモノしていますね(笑)。 海に行ったら海岸で何か拾っているし、道端でも何か拾っています。ほかの人から見 たらゴミかなと思うモノかもしれませんが、石とか木の実とか、海岸なら貝殻とか、ウニとか。
う〜ん、最近だとハチの巣とか鳥の巣とか拾ったりしています。
編集部:あ~。先日クレマチスの丘(静岡県)で、鳥の巣だけを集めて旅している人の展覧会を見ましたよ。実物の鳥の巣が展示されていましたが、いろんな形や大きさがあって、鳥ってすごいんだな~って思いました!
Y:面白いですよね~。環境によって巣の材料が違ったり、鳥の種類によって巣の形も違うんですよね。
編集部:創作のインスピレーションはどんな風に得ているのですか?
吉村:図鑑とか書物が入り口になることもあります。あと自然史博物館にはよく行きますね。そこで、「まだ知らない世界がこんなにあるんだ〜」と刺激を受けてインプットすることは多いです。
編集部:この辺りで博物館というと?
吉村:京都だと京都大学綜合博物館には行きますね。あと、大阪市立自然史博物館っていうのがあって そこへはよく行きます。アマチュアの方も参加できる「大阪自然史フェスティバル」、「ホネホネサミット」というイベントも同博物館で開催されていまして、子供から大人まで参加できる雰囲気がとてもいいんですよね。
カフェのあちらこちらにもインスピレーションの源が展示されている
モノが溢れる時代に、わたしたちが見落としがちな小さな世界に着眼し、その造形美をアートにまで高めている吉村さん。その丁寧な眼差しはまさにマインドフルでした。
次回後篇では、経営者でもある吉村さんのストレスとは?試行錯誤の末に行きついた自分にしっくりくる生活リズムとは?などをお届けします。どうぞお楽しみに!
「ウサギノネドコ」
■ 住所
京都市中京区西ノ京南原町37
■ 電話
ヤド&ミセ:075-366-8933
カフェ:075-366-6668
■ 営業時間
ミセ11:00 〜 18:30
カフェ11:30 〜 20:00(ラストオーダー19:00)
■ 定休日
ミセ・カフェ木曜日
編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部