通常の常識では、私たちは何かを見、体験した結果として感情を感じる、と考えます。
しかし、脳の中では「見る前」に感情は発生しているのです。
見えるとは、脳の中では後頭部にある「視覚野」という部分に、信号が到達して初めて「見える」ということになりますが、脳磁図という研究では、視覚野に信号が到達する前に、情動の発電装置である、扁桃体は興奮しているのです。
つまり、「見える前」に感情は発生しているのです。
もう一つの私たちの感情に対する常識は、感情とは、私たちの「要求」の表れと考えている、ということです。
だから、たとえば不安だとか、こわさなどを感じたときに、私たちは「その理由」を考える、ということをしますよね。
なぜ、こわいのか。なぜ、不安になるのか。
これは、私たちの中に潜在的な理由、要求が存在する、と考えているためにそういう認識回路になっているのです。
私がずっと昔、行っていた認知行動療法では、こんなふうに原因を分析し、今の不安や心の不安定さに対処しようとしてきました。
でも、これではいくらやっても、不安やメンタル不調は解決できなかったのです。
しかし、感情を発生させるというのは、ひとつには脳内の「扁桃体」が関与している、ということがわかり、扁桃体の特性を調べると、まったく異なることがわかるのです。
ここでは何度か書いていますが、扁桃体は魚にもあります。
魚は、音がするとぱっと逃げますが、魚は何かを考えて逃げているわけではないのです。
むしろ、本能的な生体反応として逃げている、と考えるほうがわかりやすい。
扁桃体の世界的な権威である、ジョセフ・ルドゥという研究者は、こういっています。
扁桃体に入力される信号ルートは2つあって、
一つ目は、目で見えたものが、大脳皮質(視覚野もそのひとつ)にとどきその意味を認識してから初めて、扁桃体に情報が入力され、不安や怖さが発生する、という反応ルート。
これは私たち人間が行う、常識的な感情に対する認識パターンです。たとえば、Aさんに道でばったり会ったとして、急に不安になるとする。
ああ、そういえば怒られたよな、ということを思い出して怖くなる。というようなパターンです。または、Aさんが昔苦手だった、小学校の先生に似ているということをふっと思い出し怖くなるとか。
では二つ目は?続きは後編で。
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■このたび9/14に私のメンタル本が出版されることになりました。
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うつ状態に陥っていた私が復活できたセルフセラピー法をシンプルにして、皆さんでもできるテクニックを解説している本です。関心ある方はどうぞ。
この記事を書いた人
日本メンタル再生研究所所長 山本潤一(脳科学心理セラピスト)
顧問・宗像恒次博士(筑波大学名誉教授)が開発した心理療法で、某上場企業では3年半、初回うつ休職者再発率0%に貢献。「脳科学心理セラピー」により、うつ・メンタル不調者への短期間での改善支援、復職支援、再発防止支援、などのサービスを行う。